距離、時間、お金、そして、その日の気分で、決める。
買い物かごを持つ。野菜のコーナーへ。
みんな、かっこよく並んでる。
みんな新鮮で、活き活きしてこっちを見てる。
みんな選んであげたいけど、今日必要なのは
ニンジンとジャガイモなんだ。お母さんは、
お母さんの審査基準で、選んだ。そして、かごに。
サラダは、何にしよう? キャベツ、レタス、カイワレ
コーン、大根、きゅうり、ラディッシュ、紫玉ねぎ・・・
たしか、冷蔵庫にキャベツは、あったから、
今日は、カイワレとコーンにしよう!っと
果物のコーナー。リンゴ、みかん、キーウイ
グレープフルーツ、パイナップル、桃の缶詰
ブルーベリー、ぶどうに柿もある。
お母さんは、選ぶ。
お漬物コーナー。ここは、候補者が少ない。
けどその中でも、選ぶ。
ルー、これは、種類が多い。辛いものから甘いものまで
昔からあるもの、最近発売されたもの、
ウチの定番は、コレなんだけど、今日はどうしようかなァ・・・
審査が始まる。箱は、整然と並んで、
選んでくれるのを待っている。缶も、その横ですましている。
下のほうには、レトルトカレーたちも、手軽で~す!と
アピールする。お母さんは、今日は、中辛のを選んだ。
お花も飾ろうかな?とふと思ったお母さん。
お花のバケツが並ぶ前で、選ぶ。
レジを通って、帰るのだ。
審査員を終えた、お母さんは、選んできたもので
今夜のテーブルの演出をする。
みんな、与えられた役割をこなし、
美味しく料理されて、テーブルコーディネートされて
みんなの前に披露される。
家族は、みな、元気になるのだ。
お母さんは、その笑顔を見て、満足そうに微笑む。
オーディション(audition)とは・・・・?
辞書を引くとこうある。
歌手、俳優、コメディアンの選抜を目的とした試験。
新しい才能の発掘を目的としたものと
映画の出演者や主題歌の歌い手などの
選定を目的としたものがある。
通常は非公開で行われるケースが大半だが、
オーディションそのものを
ひとつのショーとして成立させた
「公開オーディション」も行われている。
有名なミュージカル≪コーラスライン≫
主役を選ぶのでは、ない。目立たないコーラスラインを
担当する数名を数百名の候補者から選ぶ。
オーディションそのものがドラマになった。
個性が無ければ、審査員の目にとまらない。
個性が、求められているものと違えば、落とされる。
実力は、見抜かれる。将来性も見通されて
人間性までも、、見透かされる。
最終組に残れば、自信が増して、より光り輝く。
隠れていた才能も、プロに引き出してもらえる。
新しい課題が与えられ、憧れのステージに立つ。
ギャラも、もらえて、キャリアとなる。
最終組に選ばれなければ、自信を失う。
全てを否定されるわけではないが、落ち込む。
それをバネに、さらに努力する者もいる。が
その世界を去る者もいる。
人生もひとつのドラマとすれば、
まず、最初の最初から・・・
人は、ひとつの命となるまでに、母体の中で
壮絶なオーディションを勝ち抜いている。
倍率は、数億倍とも云われている。
十ヶ月、出番を待つのさえも、脅かされるときがある。
いざ人生の舞台に出発、と云う日を迎えても
舞台にたどり着けるのは、全員じゃない。
新しい世界は、初めてのことばかり。
吸ったことのない空気、あたったことのない風
浴びたことのない日差し、見たことのない景色。
動けない体、わからない言葉、会ったことのない人々・・・
ここが、与えられた新しい舞台。子役でも
台詞を覚え、泣き、笑い、歩き、歌い、走る。
大きくなれば、新しいオーデションに挑戦してゆける。
ベテランの俳優となれば、
脚本、演出も、任される時が来る。
今度は、審査員にもなって、一緒にステージをつくる、
沢山の共演者のオーディションを繰りかえし
その全員で、ドラマを作り上げてゆく。
少年の役から、若者の役。パパの役、おじさんの役。
老人、そして病気の役。死をも演じきるのだ。
愛らしい少女も、娘役となり、恋を演じ、母親役をこなし
悪女にも、聖女にもなりながら、老け役も引き受ける。
どの役柄にもオーディションが、続く。
オーデションを受けなければ、落とされることはない。
オーデションを受け、合格すれば、ステージが与えられ
賞賛を受けることもあるが、酷評されることもある。
オーデションは、どこにでもあって、
みんな、時々に、それにチャレンジしているのだ。
オーディションをやり過ごすことも、ひとつの選択。
ともかく、生きていくなかでは、選ばれる側と同時に、
審査員もしているのだ。
学校だって、クラブだって、友人だって、先生だって
買い物だって、仕事だって、遊びだって、車だって、
住むところだって・・・、旅行先も、食べ物も・・・
病院だって、薬だって・・・
決めたら、それは、ひとつの歴史となる。
但し、 何を選んでも、選ばなくても
選ばれても、選ばれなくても、
そのオーディションの結果が、その連続が、
幸運だったかどうかは
長い、長~い目で見ないと、わからない。
結果も、ひとつのプロセスに過ぎない。
それでも、みんなオーデションに並び続ける。
審査員も続け、チャレンジし、最終ステージまでゆく。
今日も明日も、オーデションが、
あちらでも、こちらでも、展開されている。