≪いきあたりバッタ≫

森のブリコ

2008年10月28日 11:48

むかしむかし、あるところに
≪いきあたりバッタ≫というバッタが 
気ままに暮らしておりました。

秋は ≪思い月≫の下で酒を飲み、 
冬は ≪なり雪≫のなかで遊びました。

ある春の日、ふと気がつくと
胸のところに 小さなシミがついていました。
気にしないようにしていましたが、シミは
夏になるともっともっと大きくなっていました。
洗濯しても 取れません。
仕方なく病院に行くとそれは、
知らない間に胸に積もった
≪苦シミ≫と≪哀シミ≫です・・・と云われました。
治す薬は、ないのですよ!とも・・・。


    
しょんぼりしていると そこへ極楽トンボがやってきて
『ほら元気だして!あそこの柿を食べると楽になるよ!』
と、いいました。
いきあたりバッタは 急いでその柿を食べました。
でも シミは 消えません!

『どうしてだろう?』
柿の木の名札を見ると そこには
≪も柿≫と≪あ柿≫と 書いてあります。

シミは どんどん濃くなるばかり・・・


そこに 今度は、真心トンボがやって来ました。
うつむいている いきあたりバッタに いいました。
「そのシミを なくしたいなら あの崖を 登りなさい!」
トンボの指差すほうを見ると険しい崖がありました。
とても 登れそうにありません。

でもたくさんの虫たちが 崖を登っておりました。

≪命崖≫という 崖でした。

いきあたりバッタも登り始めました。
何度もずり落ちそうになりました。
苦しくてつらくて 何度もやめようと思いました。
でも そのたびに 真心トンボの声がよみがえります。

洋服は、ぼろぼろになり、いっぱいすり傷もできたけど
やっとてっぺんに着きました。
立ち上がってシミを見ると すっかり消えていました。

やったー!!ばんざーい!!

いきあたりバッタさんは それから
≪がんバッタ≫さんと呼ばれるようになりました。

                    
                               (おわり)  



     ※ これは、30歳の頃、
     ある新聞記事の文章をヒントに作ったお話です。
     だから、100パーセント 創作ではありません。


     ※ 2015年にメロディができ、唄になりました。
     https://www.youtube.com/watch?v=YGNAjADtusE
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