☆ ヒントを求め様々な本を読み、様々な人の言葉に助けられて生きて来ました。☆ブリコ童話は、私なりに学び、気づいたこと、思ったこと、伝えたいことを詩に童話にエッセイにブリコラージュしたブログです。☆長いものは、左下の・・・続きを読む・・・をクリックしてくださいね!

2019年05月19日

≪ 授 業 ≫

歴史の授業のテーマにそって、
今日は 一番 大きな窓のある、見晴らしのいいスペースに
集まるように 知らされた。

≪ 授 業 ≫


昔々、人はどんな所に住み、
どんなものを食べ、何を着てきたのか?

いろいろなものが、いつ生まれ、発明されてきたのか?
それらが どんなに ライフスタイルを変えたのか?

どんな人たちが、どんな国をつくり、
どんなリーダーのもとで どんなふうに暮らしたのか?

なぜ 栄え、また なぜ 滅びたのか?
今に どう つながっているのか?

移動の間、子供たちの無邪気な交信が始まった。


ねえ!知ってる?

昔は、みんな毎日、違うもの食べてたんだって

違うものって?

いろんな色とか形とか … よくわかんないけど …

何のために?

いろいろな栄養のためだよー    エーヨー? 

誰が作るの?     ママたち…

うそっー!どうやって?

切ったり、煮たり、焼いたり…ってあったよ!   何それ?

何かなあ 野菜とか、果物とか小さくして…   うっそー!

そんなのどこで手にいれるの?      うーん…

みんなが知らないと思って馬鹿なこというなよ!

本当だよ!!



みんな席についた。そこには、大きな窓があった。

スクリーンに瞳だけが大きくて、透き通るような先生が映った。


みなさんこんにちは! 今日は、歴史を学びます。

昔を知ることで 今が よく見えてきます。

そして未来も計算できます。 窓の外をごらんなさい!


昔、私達の祖先は、これらの星の中のひとつに住んでいました。

信じられないかも知れませんが

それは事実です。


そこは、マイナスイオンたっぷりの空気のドームに守られ
緑の森や青い海など夢のように美しい
生きた場所がありました。

そこでは、たくさんの生物が生まれ、住み
自由に進化し 共存していました。

私たち人の祖先は進化の途中に生まれたのです。
陸で暮らすことを選び、立って歩くことを選び
手や頭や体を使って工夫をしその星の一部として暮らし始めました。


生き続けるために身近にあるもので、体をおおうこと
身近にあるものを食べることなど 選びました。


身近なものってなんですか?

昔は、身近に野菜や果物、

人がとることのできる動物たちが いたのです。


ほらー・・・ ね!

それは、いろいろな色や形だったんですよね!

そうです。    よく勉強してありますね。


どうやって体内に取りこむのですか?

切ったり、煮たり、焼いたり…あー、初めて聞く言葉で

解りにくいと思いますが…


ほーらね!

そうして それらを どうするのですか?

昔の人には、今よりずっと大きな口があり、
歯というものもありました。
そこから体に取り込んでだんだん変化させました。
 
ほかのものの元気な命は、
だんだんだんだん溶け出して
体全体に ゆきわたる。

めんどくさいね…  大変だ…


ほかの命の一部を体に取り込むことで 体をくるむことで
より強く、長く生きられるようになりました。

だからそんな命たちへの感謝を忘れませんでした。

粗末にすることもありませんでした

寿命と呼ばれる年数もあって
長くても百年ほどで、
命は尽きて、静かに消えたのです。


そうしないと生きられなかったんですね。

自分で そのー…とったり、切ったり、焼いたり…

なんだっけ?  とにかくそれらを作ったのですか?


そのころは 家族といって
小グループ単位で暮らしていましたから
誰かがしてくれることもあったようです


ママなんかじゃないですよねー?


ママがするところは、多かったみたいですよ。

ほらね…

≪ 授 業 ≫


ママたちは みんな博士のように、
環境学、栄養学とか薬学を わかっていたのですか?

昔は、勉強しなくても、身近にあるいろいろな命たちが
必要な栄養をそなえていたから
体内に取り込みさえすれば、
詳しく知らなくても よかったのです。

空気というもの水というものがクリーンだったから


体の仕組みは、実に実に 良くできていて
その時代に適応し、命のリレーがなされてきました。

でもその頃には命をつなぐということは、
とても大変なことでした。

その頃のママたちは誰でも、いのちの芽生えから生まれるまでの
およそ10ヶ月。人が3キログラムほどになるまでは
お腹の中に入れていました。


本当に?信じられないな…


命が母体から出てくる時は 大変な痛みが伴い
その後も 体の一部から 子供の体に栄養を
ずっと与えるのです。 立ち上がり 歩き 
自分で生きられるようになるまでは
ほとんど そばにいたようでした。


じゃあ、誰が自分のママか? わかってたってことですか?

そうですね!


へー!すごいね! 僕たちは、知らないね!

知らなくていいでしょう。


進化したんですよね?


そうですね

あるところは、進化をしましたが、

環境や人々の選択のなか、消えたものも多くありました。



今ここにいるのは、そこに住み続けるよりも 
良かったからなのですか?

そうですね


昔々の私たちの星、つまりふるさとであった本来の
地球の姿を見てみましょうか。


スクリーンに絵のような 昔の地球が映りました。


美しく青い海 鮮やかな緑の陸地 真っ白な雲も見えました。



次に・・・

これは地球暦46億年ごろ 西暦2000年頃の姿です


≪ 授 業 ≫


海の色、変わってる。緑が少なくなってる。


この星のほんの一部であったはずの人間たちの

計算ちがいが繰り返されて地球は病みました。


愚かな選択を繰り返すうちに

私たちの先祖は、もう地球に住めなくしてしまったのです。



人は、選択を人工知能にまかせるようになりました。

適正な環境、人の選別、数、寿命、食料、 ・・・

しかしその元のプログラムは人が作っていたから

ミスは、多くありました。


まだ地球本来のバランスもわかっていない頃

未熟な計算が続けられたのです。


宇宙のこともほとんどわかっていなかったのです。



さあ! 今度は、今の地球を見てみましょう!、


これが 今の地球ですか?

なんかまん丸じゃなくなっている。

色が変・・・ 土の色も無い…


もう死んでるの?


いいえ!まだあるのですから、生きています。

が、私達が住み続けられる状態ではなくなって

久しいのです。


はいこちらを見てください!


選ばれて、育てられた貴方たちだから

ここに集められました。

今日からさらに学んでゆくのです



ふるさとの地球を見ましたね!

ひとりひとり 感じたことは違うでしょう。



ここに選ばれたのはなぜでしょう?

ここで何を学ぶのでしょう? 

みんなが こんなに長生きになったのに

地球と同じようにどこか病み、

どうして自由でないのでしょう?



《愛》とか《夢》とか《幸せ》だとかいうものが

昔にはあったということです。


知識と計算、メカニックで作り出せないそういうものは

どうして消えてしまったか?


取り戻すべきか? いらないものか?

ここから考えて欲しいと思います。


どこから 何が間違ったのか?

どこからなおせばよかったか?

ひとりひとりが答えを探り

あるべき未来に繋げてほしい。




では、この時間の授業をは、終わります。

また ・・・


大きな大きな瞳は、一瞬だけ子供たちに微笑んだ。



スクリーンは暗くなった。


しばらくは 誰も 動かなかった。



《愛》? 《夢》? 《幸せ》?


それって何だろう? ひとりがそっとつぶやいた。

      

青い海って もう、作れないのかなあ?

誰かが、言った。


ママって どんな人だったのかな?

会いたかったな


そんな時代に生まれたかった…!

そうかあ?


そうだよ…!  そうかなあ?

よくわからないなあ ・・・



瞳だけが大きな子供たち

音のない 無邪気な交信をして

一瞬に、それぞれのカプセルに送られた。




                                    おしまい



Posted by 森のブリコ at 18:48

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≪ 授 業 ≫