☆ ヒントを求め様々な本を読み、様々な人の言葉に助けられて生きて来ました。☆ブリコ童話は、私なりに学び、気づいたこと、思ったこと、伝えたいことを詩に童話にエッセイにブリコラージュしたブログです。☆長いものは、左下の・・・続きを読む・・・をクリックしてくださいね!

2017年05月21日

≪ れば ≫

ないものねだりのお話です!

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 ≪ れば ≫


寒い寒い冬の朝、女の子がつぶやきました。

こんなに寒いなら、雪が降ればいいのに・・・

ある朝、雪が降りました。

少し積もって、すぐ消えてしまいました。

もっと、たくさん降ればいいのに・・・

次の日、雪がたくさんたくさん降りました。

わー!素敵!全部真っ白!

と喜びましたが、外に出られなくなりました。

女の子は、早くやんで、とければいいのに・・・

といいました。なかなか雪はとけません。




春になりました。 

雪がとけると、ひとつづつ小さな花が開きます。

もっともっと、花が咲いて、みんなが来ればいいのに・・・

といいました。・・・ しばらくすると もっともっと

花が咲いて、鳥がないて、ちょうちょもひらひら飛びました。

子供たちは、家から飛び出して

花の首かざりや、かんむりをつくります。

魚をとっている子たちもいます。笑い声が、聞こえます。


ちょっとうるさいわ!はやく夏になればいいのに・・・

みんなは、海に行きました。 お日様の下で遊びます。


暑い夏は、いや ・・・ 女の子はひとり、部屋にいて

もう秋になればいいのに・・・ と云いました。


コスモスが咲いて、葉っぱの色が変わってきました。

秋になりました。

葉っぱが庭にいっぱい落ちると、

お掃除してね!と言われました。

もう ・・・ 少しふくれっ面の女の子

落ち葉をほうきではきながら

早く冬になればいいのに・・・ そういうのでした。


また冬になりました。

寒い寒い冬の朝、女の子はつぶやきました。

こんなに寒いなら、雪がふればいいのに・・・

ある朝、雪はふったけど、すぐに消えてしまいました。

今度は、もっとふればいいのに・・・


ずっとずっと、ずっとずっと、いつでも 

女の子がそう云っていたので、

みんなは、ればちゃんと呼ぶようになりました。



そんなこんなをくり返しているうちに

ればちゃんは、大きくなりました。


私、きれいになれればいいな・・・

すてきな恋人ができればいいな・・・

幸せなお嫁さんになれればいいけど・・・

もっとお家が大きければいいし・・・

お金がたくさんあればもっといい・・・

もう年をとらなければいい ・・・


ればちゃんは、ればおねえさんから、ればママに。

ればオバサンになりました。

いつでも、ればオバサンは、ひとりごと・・ 

ぶつぶつぶつぶつ・・・ みんな、はなれて見てました。



何年かすると、ればオバサンも、年を取り

ればばあばになりました。

そして、とうとう病気になったのです。

目が見えなくなり、耳も遠くなりました。

歩くこともできなくなって、

それでも ベッドでひとり言・・・







病気が、治ればいい・・・

もういちど雪が見られれば・・・

もういちど花が見られば・・・

もういちど皆が見られれば・・・ 

どんなに幸せなことだろう


鳥の声もみんなの声も聞ければいいな・・・

夏の海にも行ければいいな・・・

コスモス畑を歩ければ・・・

落ち葉の掃除も、できればいい・・・


ればばあばは、その夜、夢を見ました。


ればばあばは、小さなればちゃんに戻っていました。

寒い雪の朝、やっぱりつぶやいていました。

雪がふればいいな・・・ お空を見上げていると

雪がちらちらふって来ました。

なんてきれいなんでしょう!

ればちゃんは、つぶやきながらほほ笑んでいます。


赤い手袋にのる雪を、静かに見つめておりました。

なんて素敵なんでしょう!


たくさん雪が降った日は、大きな雪だるまを作ります。

きゃっきゃっきゃっと、笑いながら

みんなとそり遊びも、楽しみました。 


暖炉のそばでは、お母さまが本を読んでくれました。

編み物も教えてくれました。 お母さま・・・大好き!

お母さまにいいました。お母さまは、にっこりと

私の可愛い、可愛い子・・・ 頭をなでてくれました。


あたたかいお料理を、家族みんなでかこみます。

ずっとずっと忘れてた、おじいさまやおばあさま

お父さまもおりました。やさしかった兄さんも

きれいだった姉さんも 小さい弟や妹も ・・・

みんな、にこにこ笑っていました。



・・・ 夢 ・・・ 懐かしい・・・・

夜中に目がさめた、ればばあばはつぶやきました。


ほんとうにいい夢を見た 

・・・ ほんとうにいい夢だった・・・


朝になりました。 病気が、治ればいいけれど・・・

ばあばは窓の外をながめながら思っていました。


もういちど雪が見られたら

もういちど花が見られたら

もういちどみんなと遊べたら ・・・

みんなの声が聞こえたら ・・・

海に行けたらうれしいし・・・

コスモス畑を歩けたら・・・

落ち葉のお掃除もちゃんとする・・・


もし叶わないのなら、もう一度

あんな夢を見たいもの ・・・

ばあばは、そのまま目を閉じて

いつしか眠っておりました。



夢には、光が近づいてきて、中から女神が現れました。

お迎えですか? 女神は何も答えません。

天国に行くのですか? それとも地獄?

女神は何も答えません。ただ微笑んでいるだけでした。


ばあばは、二度と目を覚ましませんでした。


ばあばのお墓に回りには、春になれば花が咲き、

ちょうちょも飛んでおりました。




何年かたったとき、その村に、赤ちゃんが生まれました。

その子は、冬も春の日も、夏も秋も 楽しそう・・・

キャッキャッキャッと声を上げ、いつも笑っておりました。

まわりの人はそれを見て、幸せな気持ちになりました。



その子もその子の周りの人も、

冬も春も、夏も秋も 幸せに暮らしてゆきました。

       冬も春も、夏も秋も 幸せに暮らしてゆきました。  


                                 おわり


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Posted by 森のブリコ at 22:28 │絵 本

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