ブリコ童話・作文集　

洗濯しても取れません。

シャワーを浴びても、取れません。

仕方なく病院に行くとそれは、「楽しみの裏側に
いつの間にか積もった苦シミと哀シミですね。」
と云われました。
「 治す薬は、ないのですよ！」　とも・・・

　　　　
しょんぼりしていると、
極楽トンボがやってきて

「　ほら、どうした？　元気だしな！
　そんなシミ、気にするなよ！
　あそこの柿を食べれば、大丈夫だよ！」
と、いいます。

いきあたりバッタは　急いでそこに行って
その柿をムシャムシャ、ムシャムシャ
夢中で食べました。いくつもいくつも食べましたが
シミは　消えません。ますます濃くなるばかりです。

『 どうしてだろう？』

柿の木の立札を見ると　そこには
≪も柿≫と≪あ柿≫と　書いてありました。



今度は、真心トンボが　やって来ました。

うつむいている　いきあたりバッタに　言いました。

「　そのシミを　なくしたいなら　あの崖を　登りなさい！」

トンボの指差すほうを見ると険しい崖がありました。

とても　登れそうにありません。無理だよ・・・

でもたくさんの虫たちが　崖を登っておりました。

それは、≪命崖≫・・・という　崖でした。

「　それしかないのです！」

迷い、悩みましたが、勇気を出して

いきあたりバッタも登り始めました。


何度も、何度も、ずり落ちそうになりました。

苦しくてつらくて　何度もやめようと思いました。

でも　そのたびに　真心トンボの声がよみがえります。



洋服は、ぼろぼろ、いっぱいすり傷もできたけど
やっとてっぺんに着きました。

広々とした景色が、見えました。

ふと見ると、あのシミは・・・
すっかり消えていました。

やったー！！バンザーイ


いきあたりバッタさんは　お礼が言いたくて

そのあと、真心トンボさんを探しました。

トンボさんの姿は、何処にも見当たりませんでした。

けれど、手紙がひとつありました。

いきあたりバッタさんは、それから
何かあるたびに、その手紙を、読み返しました。

いつか真心トンボさんに会えたら、笑顔で
ありがとう！って言おう！


何年かすると、いきあたりバッタさんは、
みんなから、
≪がんバッタ≫さんと呼ばれるようになりました。


めでたし、めでたし・・・

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（おわり）