☆ ヒントを求め様々な本を読み、様々な人の言葉に助けられて生きて来ました。☆ブリコ童話は、私なりに学び、気づいたこと、思ったこと、伝えたいことを詩に童話にエッセイにブリコラージュしたブログです。☆長いものは、左下の・・・続きを読む・・・をクリックしてくださいね!

2017年05月24日

≪ いつも一緒 ≫

最近思ったことは、どんなことも
そのおかげということと、そのせいでということは
セットだなあ・・・ということ


と思っていて、こんな話を思いつきました。

場所は・・・ 江戸時代の田舎から ・・・ 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


≪ いつも一緒 ≫

昔、貧しいお百姓さんの家に
双子の女の子が生まれました。

いっぺんに二人の女の子が生まれたので
お父さんは、男の子ならよかったのに・・・
と思いました。

ひとりはおせい、もう一人はおかげと名づけられました。
二人は、眠るのも泣くのも、いつも一緒・・・

二人が一緒に泣くと、寝られやしない・・・と
お父さんは、少し不機嫌になります。

でも二人のかわいい寝顔や、元気な笑顔を見ると
この子たちのためなら頑張れる・・・と思えるのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少し大きくなると、二人は、少しづつ
違うところが出てきました。 

おせいは、花が好き、ちょうちょが好き、鳥が好き、
川が好き・・・お手伝いをしていても
すぐにどこかに行ってしまいます。

おかげは、真面目な静かな子。
いわれた仕事は、一生懸命やりました。
おせいが、ほっぽらかした仕事も
お父さんが怒る前に、せっせせっせと片付けます。

お母さんは、いつも、『 おせいのせいで、いつも
おかげに苦労をかける・・・』 と思っていました。

少し日が傾いたころ、おせいは、手に積んだ花を
いっぱい持って、走ってきて、「お姉ちゃんごめんね!
小鳥さんが、あっちに行こう!っていうもんだから」 と
その花と、両方のお袖からは、たくさんの木の実を
「 はい!」と差し出すのでした。

おかげは、少し怒ったふりをして
「明日は、ちゃんとお手伝いするんだよ!」と
言いながら、その花と木の実を受け取って
にこにこしながら、手をつなぎ、一緒にお家に帰るのでした。

囲炉裏端で、今夜もお鍋を囲みます。
いつもは芋と、茸、少しの青菜だけですが、
今日は、木の実も入っています。

お父さんは大きなお椀、お母さんと
小さな二人は小さなお椀でいただきます。

隅の小さな桶には、花が飾られていました。
おせいは、昼間どこへ行っていたのか?
どこに花が咲いていたのか?
木の実は、どんなふうに落ちていたのか?を
元気な声で話します。それを聞くのは
みんなにとって、とても楽しいことでした。

お父さんも、そのときは、にこにこ静かに聞いていて
「 おかげにみんな押しつけてちゃ駄目だぞ!」
と静かにひとこと言っただけで、眠ってしまいました。

「お姉ちゃんごめんね!」 「 いいよ!いいよ!」
そんな仲の良いおかげとせいを見て
お母さんは、にっこり・・・みんな、ぐっすり眠りました。


次の日になると、おせいは、畑に出るのですが
また、何かが聞こえたり、飛んでいたりすると
そちらに走って行ってしまうのです。

お父さん、お母さんが呼んでも、気づきません。
またおかげが、おせいの分まで、仕事をするのでした。

今日は、「木こりのお爺さんにあったんだよ!
草の名前を教えてもらったよ!
イノシシの肉をもらったよ!」 おせいは、また
楽しそうに帰ってきて、おしゃべりするのでした。

みんなは、少し困った顔で、それでも
夜は、イノシシのお肉の入ったお鍋を、
手を合わせて頂きました。


何日かしたある日のこと、大きな切り株を抜こうと
ひとりで引っ張っていたお父さんが、
手を滑らせて尻もちをついた時に
大けがをしてしまいました。苦しそうな声で
畑のお母さんを呼びました。

駆け寄ったお母さんは、お父さんの足を見て
「 まあ大変・・・足が・・・。 血を止めないと・・・⁾」
「 おかげ!おせい!」と二人を呼びました。

おかげは、びっくりして、「お父さん!大丈夫?」と
と手を握りました。おせいは、「木こりのお爺さん呼んでくる!」と
走ってゆきました。

お父さんは、痛そうにあぶら汗を流しています。
しばらくすると、おせいが、木こりのお爺さんを連れてきました。
「これは・・・」 お爺さんは、その傷口を見て驚きました。

おかげにいいました。「うちから桶とボロ布と細い縄を
持ってくるんじゃ」 おかげは、うなづいて
すぐに取りに行きました。

おせいには、細長くてで丈夫な枝を三本拾ってくるように
言いました。林の中を探して、戻ってきました。
おかげが戻ってくると、今度は、お母さんに言いました。

「きれいな清水が湧いている所を、この子は知っている。
そこで水を汲んできなされ。・・・おせいは、わかるな!
案内するんじゃ!そして、前に教えた、すぐそばにあるあの
黄色い花の丸い葉っぱ、なるべく大きなのをな、
五、六枚、摘んでくるんじゃ・・・」

「 うん!わかった!」 おせいは、お母さんを案内して
森の奥に入ってゆきました。

おかげは、手拭いでお父さんの汗を拭いています。
「 心配せんでいい・・・ 」 お爺さんは、優しく言いました。


しばらくすると、おせいとお母さんが戻ってきました。
「お母さん!」 おかげは、お母さんのところに走り寄って
桶を持ってあげました。それをお父さんのそばに置くと
きれいな水を手ですくって、お父さんに飲ませてあげました。

おせいは、丸い葉っぱをお爺さんに渡しました。
「よう、覚えとったのお!賢い子じゃ・・・」そう言いながら
頭をなでました。

お爺さんは、きれいな水で、お父さんの傷口を洗いました。
そしてボロ布を絞ってきれいに拭くと、今度は、丸い葉っぱを
その皺くちゃの手で、モシャモシャ揉んで柔らかくすると
傷口にそおっと当てました。そのあと、丈夫な枝を足に添わせて
ずれないように布と細い縄できっちり縛りました。

「立てるかの?」 ⁾お爺さんは、お父さんに肩を貸しました。
ゆっくりゆっくり、家まで帰りました。

囲炉裏のそばに、お父さんを寝かせます。
お父さんは、少し落ち着いて、「すまんことです!」と
お爺さんに言いました。もう遅いので、お爺さんは
泊まってゆくことになりました。貧しい食卓でしたが
お爺さんは、干し肉を持っていましたので
いつもよりごちそうとなり、またおせいはいつものように
おしゃべりをして、にぎやかな夜になりました。


次の朝早く、お爺さんは
薬草のこと、傷の手当のことなど言い残し、
森に帰ってゆきました。

日に日にお父さんの足は、よくなって何日かすると、
畑まで歩いて来られるようになりました。

お母さんと、二人の娘は、お父さんの分まで働きます。

いつも困りもんだったおせいのおかげで、助かったな・・・
真面目なおかげは、優しくてほんとうにいい子だ。
ふたりがこれからも仲良く、大きくなってくれればいい。

お父さんは、畑で仲良く働く二人を見て思いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人が大きくなると、もう奉公に出る年ごろに。
町の大店にと口入屋が話します。

「元気な子守をひとり!と言われてるんでさあ・・・」

お父さんとお母さんは、困りました。
元気なのは、間違いなくおせいのほうです。
でも真面目に仕事ができるのは、おかげのほうです。

おかげに聞くと、おかげは、「一人じゃ絶対に行かない!
おせいと一緒でなけりゃ・・・」 というのです。

おせいも、「わたしもお姉ちゃんと一緒に行きたい!」と
聞きません。口入屋は、仕方なくふたりを
連れてゆくことにしました。
「 体に気を付けるんだよ!」
「 お父も、お母もな・・・」 別れを告げました。


町には、人がいっぱい。大店にも、使用人が
いっぱいいました。
おかみさんには、「一人でいいといったのに・・・」 と
不満顔をされました。 「給金は一人分だよ!
二人分食いぶちがいるんだからね・・・」
おかみさんは、そういいながらも、なんとか雇ってくれました。

ふたりは、いつも一緒!お布団もひとつです。
早起きが得意なおかげが、おせいを起こします。
朝から掃き掃除、拭き掃除を片付けます。

土間に座って、ぶっかけの麦飯を頂くと、すぐ子守です。
小さな二人には重い赤ん坊でしたが、かわりこばんこに
おんぶしたり、あやしたり、おむつを替えたり、洗ったり
飯時もひとりづつすませて・・・なんとか夕方まで、
子守をすることができました。

その子が大きくなるころ、またひとり赤ん坊が生まれました。
おかみさんが赤ん坊に、乳をふくませているときに
時々、お菓子をもらえる時もありました。
二人は、『 こんな美味しいもん、お父やお母にも
食べさせたいな・・・』 と、思ったりしました。

二人で、二人の子を見ることになりました。その時も
もう慣れているので、力を合わせ、なんとか
叱られずにやってゆくことができました。

おせいは、子供たちに、花の名前や昔話、
数え唄やまりつき、お手玉などを教えてやりました。
おかげは、お行儀や、身の回りのこと、
ちゃんとひとりでできるよう、ゆっくり教えてやりました。


子供たちが大きくなると、二人は、子守から
下働きの女中になりました。女中頭は、厳しい人でしたが
二人の良いところを見抜き、色々仕込んでくれました。

娘になるころには、その大店に
なくてはならない二人になっていました。

おせいは、人当たりがよく、陽気で、そこにいるだけで
家の中も、お店も明るくなります。
ただ、外を金魚屋さんが通ったり、
お祭りが近づいてくる頃は
そわそわしてしまい、叱られることもありました。

物静かなおかげは、賢く、台所も任されたり、
縫物も頼まれて、おかみさんやお子さんが
お出かけになる時は、ついてくるように
云われました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

おかげもおせいも、それぞれ亭主を持ち
子供もできました。お互い遠くないところに住んでいて
何かあれば助け合いました。

お父やお母が年を取ると、孫たちを連れて
遊びがてら、畑の手伝いに・・・
一緒にご飯を食べたり、いろんなことを話したりしました。

ふたりは、仲良く何かあればいつも一緒に
知恵を出し合い、助け合い
ずっとずっと幸せに暮らしてゆきました。

村の人たちは、云いました。
おかげとおせいは、本当に仲がいいなあ・・・
小さい頃からずっと一緒、いつも一緒で
良いことだなあ・・・ と ・・・ 


 
                               おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

塞翁が馬 という 故事があります。
おかげとおせいのお話もそんなことかもしれません。

ブリコ童話を読んだ方が、
輪廻転生、塞翁が馬、願兼於業・・・ ほか色々が
易しい言葉、短いお話で伝えられていてよかった。
・・・と言ってくださいました。

有難いお言葉・・・ これからも、
そんなお話を作ってゆきたいものです m(_)m


同じカテゴリー(大人の童話)の記事
≪青いちじく≫
≪青いちじく≫(2021-11-17 05:04)

《 二人の天使 》
《 二人の天使 》(2019-05-14 12:45)

≪ 春の夢 ≫
≪ 春の夢 ≫(2018-04-13 06:50)

≪ 竪琴の調べ ≫
≪ 竪琴の調べ ≫(2017-05-23 10:03)



削除
≪ いつも一緒 ≫